国内では2022年4月、積極的接種勧奨が再開ヒトパピローマウイルス(HPV)は、主に性行為によって感染するウイルスです。性交渉を経験すると、男女ともに多くがHPVに感染します。HPVの遺伝子型は200種類以上が知られており、その一部は子宮頸がんをはじめ、中咽頭、肛門、腟、陰茎などのがん、性器に良性のイボを発症する尖圭コンジローマなどの疾患の原因となります。日本では2022年4月、接種後有症状の問題で約9年間差し控えられていたHPVワクチンの定期接種の積極的勧奨が再開しました。定期接種の対象は、小学校6年~高校1年相当の女性です。積極的勧奨が控えられていた間に接種機会を逃した女性(主に1997年度~2007年度生まれ)に対する経過措置として、キャッチアップ接種(2022年4月1日~2025年3月31日)が公費で行われました。また、このキャッチアップ接種期間(2022年4月1日~2025年3月31日)に1回以上接種を開始した女性(1997年度~2008年度生まれなど)に対するキャッチアップ接種の経過措置(2025年4月1日~2026年3月31日まで)も、引き続き公費で行われています(2026年2月現在)。男性への接種は定期接種にはなっていませんが、東京都の23区の多くや北海道余市町、秋田県横手市、埼玉県秩父市、茨城県水戸市、三重県桑名市、宮崎県宮崎市など任意接種の費用助成を開始する自治体が全国的に広がっています。 接種率の向上を目指し、計画的なスケジュールでの接種を推奨世界保健機関(WHO)は、子宮頸がん撲滅のために、2030年までにすべての国で15歳までに女性のHPVワクチン接種率90%以上を達成することなどを目標に掲げています※1。厚生労働省や日本ワクチン学会は、接種率の向上を目指し、公費でのHPVワクチン接種を希望する人に計画的なスケジュールで接種するよう推奨しています。また、接種機会を逃すことがないように、定期接種最終学年となる高校1年相当の対象者への接種推進を強く呼びかけました※2。現在、国内において承認されているワクチンは、2価(サーバリックス)、4価(ガーダシル*)および9価(シルガード9)の3種類で、なかでも9つのHPV型の感染を予防できる9価ワクチンが主流となっています。一定の間隔をあけて、原則同じ種類のワクチンを合計2回または3回接種します。9価ワクチンは2023年度から定期接種とキャッチアップ接種に導入され、2024年度には接種されたワクチンの95%以上を占めています※3。今後、定期接種では9価ワクチンのみを使用する方向で議論が進められています。9価ワクチン接種の回数は、初回接種時の年齢によって異なります。ここでは9価ワクチンを中心に、HPVワクチン接種者の年齢別に接種回数の違いや標準的な接種スケジュールを解説します。*販売元のMSD株式会社は、2026年12月末に4価ワクチンの販売を終了することを発表しました。また、2025年11月19日には、厚生労働省の厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会「予防接種基本方針部会」が4価ワクチンを定期接種の対象から除くことを了承しました HPVワクチンの特徴と標準的な接種スケジュールHPVワクチンを接種すると、体の中でHPVに対する抗体がつくられます。この抗体が、HPVが腟や子宮頸部から侵入するのをブロックすることで、感染を防ぎます。抗体はウイルスの型(遺伝子型)ごとに決まっているため、原則として、同じ型のHPV感染を阻止します。なお、その効果を長期間維持するためには、ワクチンを複数回接種する必要があります。2023年から定期接種化された9価ワクチンは、HPV16、18型に加え、尖圭コンジローマの原因となるHPVの2つの型(6、11)、他のハイリスクHPVの5つの型(31、33、45、52、58)の感染を予防し、子宮頸がんの原因の80~90%を防ぐと考えられています(表、図1)。表 ワクチンで予防できるHPV型販売開始尖圭コンジローマの原因となるHPV型がんの原因となるHPV型子宮頸がん予防効果2価ワクチン(サーバリックス)2009年12月 ―16、1860~70%4価ワクチン(ガーダシル)2011年8月6、1116、1860~70%9価ワクチン(シルガード9)2021年2月6、1116、18、31、33、45、52、5880~90%厚生労働省HP:HPVワクチンに関するQ&Aより作表https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/hpv_qa.html(2026年2月閲覧)図1 日本人女性の子宮頸がんから検出されたHPV型とワクチンの予防範囲厚生労働省HP:HPVワクチンに関するQ&Ahttps://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/hpv_qa.html(2026年2月閲覧)しかし接種する時点で感染していないHPV型の感染予防はできますが、既に感染しているHPV型は予防できないため、性交渉前の早いうちからの接種が望ましく、産婦人科診療ガイドラインでは、10~14歳での接種が推奨されています※4。ただし、9価ワクチンでは、接種前に既に感染していたHPV以外が引き起こす子宮頸部、外陰部、腟の病変の発生を減少させる効果も示され※5、既に性交渉のある女性へのキャッチアップ接種で効果が期待できることの根拠となっています。HPVワクチンの標準的な接種スケジュールは図2のようになります。 図2 標準的な接種回数および間隔厚生労働省HP:HPVワクチンに関するQ&Ahttps://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/hpv_qa.html(2026年2月閲覧)9価ワクチンの2回接種:初回接種時15歳未満1回目の接種を15歳になるまでに受ける場合、通常6か月後に2回目を接種します(0、6か月の合計2回)。6か月後に2回目の接種ができない場合、初回接種から5か月以上あけて2回目を接種します。2回目の接種が初回接種から5か月未満であった場合、2回目の接種から3か月以上間隔をあけて3回目の接種を実施する必要があります。9価ワクチンの3回接種:初回接種時15歳以上1回目の接種を15歳になってから受ける場合、通常2か月後に2回目、6か月後に3回目を接種します(0、2、6か月の合計3回)。2回目と3回目の接種が初回接種のそれぞれ2か月後と6か月後にできない場合、2回目は初回接種から1か月以上、3回目は2回目から3か月以上間隔をあけて接種します。 9価ワクチンの1回目の接種を15歳未満で受ける場合、なぜ合計2回接種でよい?日本人を対象とした臨床試験で、9価ワクチンの2回接種を受けた9~14歳女性では各HPV型の感染を防ぐ効果*が3回接種を受けた16~26歳女性に劣らないことが確認されました。また、安全性も確認されています。これを受け、9価ワクチンは、9歳以上15歳未満の女性には合計2回の接種が可能となり、2023年4月から定期接種となりました。さらに、2025年8月に接種対象が男性に拡大され、「9歳以上15歳未満の者は、初回接種から6~12か月の間隔を置いた合計2回の接種とすることができる」と添付文書が改定されました※5。*ワクチン接種後に血液中の抗体を検出する検査を行い、抗体の量を表す指標である抗体価が一定の基準を満たした者の割合が多いと効果が高いと判断できます 接種回数についてのよくある質問Q. キャッチアップ接種の対象者は何回接種が必要ですか?A. キャッチアップ接種の対象者は、合計3回接種が必要です。キャッチアップ接種は、1997年4月2日~2009年4月1日生まれの女性(2025年度に17~28歳)で、2022年4月1日~2025年3月31日までにHPVワクチンを1回以上受けた方は、2026年3月31日までの間、経過措置により残りの接種を公費で受けられます。Q. 男性が接種する場合は何回接種が必要ですか?A. わが国において、女性への接種が承認されているHPVワクチンは、2価ワクチン、4価ワクチン、9価ワクチンの3種類ですが、男性への接種が承認されているのは4価ワクチンと9価ワクチンの2種類です。接種方法は男女で違いはありませんが、男性へのHPVワクチンの接種は、任意接種として実施されています。Q. 1回または2回接種してから1年以上経過してしまいました。接種をやり直す必要がありますか?A. 数年以上の接種間隔があいた後にHPVワクチンを接種した場合も、一定程度の効果と安全性が示されています。決められた回数を完了させることが大切ですので、できるだけ早めに残りの接種を受けるようにしてください。Q. できるだけ早く接種を完了したい場合、何回接種を選ぶとよいでしょうか?A. HPVワクチンの標準的な接種スケジュールでは、どのワクチンを選んでも完了まで6か月かかります。計画的に接種することが望ましいですが、標準的なスケジュールで接種できない場合は、9価ワクチンの3回接種は最短4か月で完了することが可能です(0、1、4か月の合計3回接種)。15歳未満は合計2回接種を選択可能ですが、標準的なスケジュールで接種できない場合、最短でも5か月かかります(0、5か月の合計2回接種)。参考文献※1 日本WHO協会HP:子宮頸がん撲滅に向けて前進https://japan-who.or.jp/news-releases/2311-34/(2026年2月閲覧)※2 日本ワクチン学会HP:HPVワクチンの定期接種最終学年(高校1年相当)に対するリーフレットを活用した周知及び接種の推進についてhttps://www.kankyokansen.org/wp-content/uploads/250914_Promotion_Awareness_and_Vaccination_Leaflets_for_the_Final_Grade_Level_of_Routine_HPV-Vaccination.pdf(2026年2月閲覧)※3 厚生労働省:第72回厚生科学審議会 予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会(2025年11月19日)資料4 「2価及び4価HPVワクチンについて」https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001597067.pdf(2026年2月閲覧)※4 日本産科婦人科学会,日本産婦人科医会編・監:産婦人科診療ガイドライン-婦人科外来編2023, 日本産婦人科学会, 2023.https://www.jsog.or.jp/activity/pdf/gl_fujinka_2023.pdf (2026年2月閲覧)※5 シルガード9 添付文書https://www.msdconnect.jp/wp-content/uploads/sites/5/2026/02/pi_silgard9_injnsr.pdf(2026年2月閲覧) 監修者甲賀かをり先生千葉大学大学院医学研究院産婦人科学 教授産婦人科医ちばHPV zeroプロジェクトメンバー