岡山県は、全国でも有数の子宮頸がん予防に熱心な県として知られています。その先頭に立って指揮をしているのが知事を務める伊原木隆太氏です。現在4期目の伊原木知事は、2019年頃から、全国に先駆けて、若い世代へ向けたHPVワクチンなどの子宮頸がん予防の正しい知識の普及に積極的に取り組んできました。一般社団法人メディカルチェック推進機構が2025年11月9日に主催した子宮頸がん・感染症啓発講演会において、伊原木知事は岡山県が行っている子宮頸がん予防やHPVワクチン接種の啓発に関する現状などを紹介しました。毎年1万人がかかり、3,000人が死亡まず、わが国における子宮頸がんの罹患状況について紹介します。国立がん研究センターのがん情報サービスによると、わが国では毎年約1万人の女性が子宮頸がんにかかり、約3,000人が亡くなっているとされています。罹患率は20代後半から急増し、30代でピークを迎えます※1。子宮頸がんの原因のほとんどがHPVの感染で、性的接触によるものと考えられています。感染は男女問わず多くの人が経験し、ほとんどが自然に消滅しますが、一部が前がん病変からがん細胞へと進行します。そこで、若い世代からHPVワクチンの接種により感染を予防することと、子宮頸がん検診により、早期に発見し、治療を行うことが重要です。HPVワクチンには、前がん病変を減少させる効果と、がんそのものを予防する効果があります。HPVワクチンは、2006年以降、欧米で承認され、日本で承認されたのは2009年、定期接種化されたのは2013年4月のことでした。しかし、接種後の多様な症状が報告されたことから、定期接種化されてからわずか2か月後の同年6月に積極的勧奨が一時差し控えられ、接種率が諸外国と比べて低い水準で推移していました。HPVワクチンの有効性と安全性のエビデンスが動くきっかけに日本が積極的勧奨を控えていた間も、HPVワクチンの有効性や安全性に関する研究が進められていました。2007年にHPVワクチンを導入したオーストラリアでは、HPVワクチン導入後における子宮頸部高度病変の検出率が大幅に低下し、特に20歳未満では、1,000人あたり11.6人だった検出率が、2014年には5.0人へと半減していました※2。この研究により、ワクチンがHPV関連疾患を確実に低減させる効果が示されました。さらに、同時期に愛知県名古屋市在住の女性を対象としたワクチン接種後の副反応の調査が報告され、HPVワクチン非接種の女性群と比較して、接種した女性群で副反応の症状の発生率に有意な上昇は認められなかったことも示されました※3。このように、予防できるがんであるにもかかわらず、日本がHPVワクチンの積極的な接種勧奨を差し控えていたことに対し、非常に悔しい思いを持っておりました。このことをきっかけに、HPVワクチンに関する正しい知識の普及に向けた取り組みを始めました。厚生労働省に提案、県独自で資材を作成国が積極的勧奨を再開する前の2019年から、先頭に立ち、国や全国の都道府県に対し、子宮頸がん予防の大切さを訴えてきました。2019年6月には厚生労働省に対し、「若い世代のがん対策に積極的に取り組むこと」や「HPVワクチン接種と子宮頸がん予防に関する正しい知識の普及啓発への財政支援」を直接要望し、同年8月には、県独自で「子宮頸がん予防に関するリーフレット」を作成して配布するなどする中で、HPVワクチン接種に関する国の動きにも変化が現れはじめました。2021年11月には、積極的勧奨の差し控え終了が決定し、2022年4月には、積極的勧奨が再開しました。岡山県では、先述のリーフレット(写真1)に加え、マンガ(写真2)や動画等の啓発資材の作成や、産婦人科医などの専門家による小中学校での授業の実施に加えて、近年では、SNSでも広告を配信するなど、若い世代へ向けた啓発に力を入れています。写真1. 子宮頸がん予防に関するリーフレット(2025年10月発行の最新版)写真2. 子宮頸がん予防に関するマンガ「そのとき、わたしは。」写真1・2 岡山県ホームページ:もっと子宮けいがんを知るためにhttps://www.pref.okayama.jp/page/924915.html(2025年11月閲覧)これらの先駆的な取り組みの成果は実施率にも現れており、HPVワクチンの定期接種対象者(小学校6年生~高校1年生相当の女子)のうち、1回目の実施率は全国平均と比べ、岡山県では上回っています(2025年3月時点)。特に小学校6年生に限ると、2022年以降、全国の平均実施率を大幅に上回って推移しています。岡山県では、積極的勧奨再開前から、さまざまなことに取り組んできましたが、やはり、子宮頸がん予防は国全体で取り組むべきことです。今後も、子宮頸がん予防を全国で一層進めていくため、国へ働きかけていきます。岡山県は、かねてより、①HPVに感染していない初交前に接種することが重要②9歳以上で実施する他の定期接種と連続性を持って接種勧奨が可能③接種回数が2回(15歳未満)で済む期間が拡大、の3つの理由から、「9価ワクチンの定期接種対象年齢を9歳へ引き下げること」を要望しています。また、HPVは男女を問わず繰り返し感染することから、「男性に対する定期接種化についても検討をすすめ、結論を出すこと」も併せて要望しています。今後も、一人でも多くの方の命を救えるよう、子宮頸がん予防に一層取り組んでいきたいと考えています。参考文献※1 国立研究開発法人国立がん研究センター がん情報サービス がん種別統計情報 子宮頸部https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/17_cervix_uteri.html(2025年11月閲覧)※2 Patel C et al. Euro Surveill. 2018; 23: 1700737. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30326995/※3 Suzuki S, et al. Papillomavirus Res 2018; 5: 96–103.https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29481964/